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医学部受験の慶応進学会フロンティア» ブログ » 中村 克己» 職業倫理とワークライフバランス

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職業倫理とワークライフバランス

   投稿日: 2018/08/20    投稿者:中村 克己

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 少し前のブログで須藤元気さんの英語本に触れた際、「1日3時間、英語に触れるなんて、社会人にはまず無理」と私は記しました。ただ、本音を言えばそれはレベルが低い話であって、勿論、こなせる人もいます。先日、元グーグル日本法人名誉会長の村上憲郎さんがインタビューに答えていて、思わず唸りました。

 村上さんが英語にまともに向き合ったのは31歳のとき。転職先で英語が必要になってからです。以下、「英語の多動力」(P58~59)より↓

 「私は1日3時間、ほとんど1日も休まず3年間、英語を勉強しました。どうやって1日に3時間も工面したんですか?とよく聞かれるのですが、それ以前の職場では残業月200時間生活をしていたので、3時間の英語学習なんて、文字通り朝飯前という感覚でした。(中略)

 1日3時間というと、結構なハードスケジュールだと思う方もたくさんいるでしょう。でも、実際時間なんか気をつければいくらでも作れます。(中略)仕事前だって、仕事後だって、1日3時間は絶対につくることができるんです。

 私の勉強法は極めてシンプルでした。やったことは3つです。とりあえず英単語をたくさん見ること、英語を1日1時間聴くこと、1時間英語の本を読むこと。これを3年間やりました」

 大成する人は、やはりパワーが違います。ただ私は、「それ以前の職場では残業月200時間生活をしていた」という点が気になりました。村上氏は1947年生まれ。京都大学を卒業後、日立電子に就職したのが1970年。1978年に転職していますから、「以前の職場で月200時間の残業をしていた」のは、1970年代、ということになります。

 1970年代。年功序列、終身雇用が当然で、その生涯保障の引き換えとして、社員が長時間労働を甘受するのが当たり前だった時代です。さらに言えば、男女雇用機会均等法の施行前で、「女はすぐ辞める。だから雇わない」と企業が半ば公言していた時代、とも言えます。村上さんは「1日3時間は絶対に作れる」と言っていますが、ご自身は、家事・育児を奥さんに任せきりにして、フルサポートを受けていた可能性大です。もしそうだとすれば、彼の英語力は男性が持っていた既得権益に乗った上での達成であり、そこまで胸を張れることではないかもしれません。

 東京医科大学が世間を騒がせて以来、女性の働き方、もっと言えば多様性のある社会について、考える機会が増えました。唐突ですが、一つ引用をします↓

 2002年4月18日 朝日新聞より
 前金沢大学医学部附属病院長 河崎一夫先生の寄稿。タイトルは「医学を選んだ君に問う」

 「医師を目指す君にまず問う。高校時代にどの教科が好きだったか?物理学に魅せられたかもしれない。しかし医学が大好きだったことはあり得ない。日本国中で医学を教える高校はないからだ。

 高校時代に物理学または英語が大好きだったら、なぜ理学部物理学科や文学部英文学科に進学しなかったのか?物理学に魅せられたのなら、物理学科での授業は面白いに違いない。

 君自身が医学を好むか嫌いかを度外視して、医学を専攻した事実を受容せねばならない。結論を急ぐ。授業が面白くないと言って、授業をサボることは許されない。医学が君にとって面白いか否か全く分からないのに、別の理由(動機)で医学を選んだのは君自身の責任である。

 次に君に問う。人前で堂々と医学を選んだ理由を言えるか?万一『将来、経済的に社会的に恵まれそう』以外の本音の理由が想起できないなら、君はダンテの『神曲』を読破せねばならない。それが出来ないなら早々に転学すべきである。

 さらに問う。奉仕と犠牲の精神はあるか?医師の仕事はテレビドラマのような格好のいいものではない。重症患者のために連夜の泊まりこみ、急患のため休日の予定の突然の取り消しなど日常茶飯事だ。死にいたる病に泣く患者の心に君は添えるか?

 君に強く求める。医師の知識不足は許されない。知識不足のまま医師になると、罪のない患者を死なす。知らない病名の診断は不可能だ。知らない治療を出来るはずがない。そして自責の念がないままに『あらゆる手を尽くしましたが、残念でした』と言って恥じない。

 こんな医師になりたくないなら、『よく学び、よく遊び』は許されない。医学生は『よく学び、よく学び』しかないと覚悟せねばならない。

 医師国家試験の不合格者はどの医学校にもいる。全員が合格してもおかしくない医師国家試験に1,2割が落ちるのは、医師という職業の重い責任の認識の欠落による。君自身や君の最愛の人が重病に陥った時に、勉強不足の医師にその命を任せられるか?医師には知らざるは許されない。医師になることは、身震いするほど怖いことだ。(以下略)」

 格調高い名文だと思います。以前の私は、医学生や医学部受験生には是非読んでもらいたい内容だ、と思っていました。「天皇陛下の執刀医」として名を馳せた天野篤先生にとっても「私のバイブル」だそうで、「インターネットでも読めるので、医学部を目指す皆さんには是非読んでもらいたい」と語っています。

 しかし、今の私は思うのです。河崎先生が説く「医師の職業倫理」を完璧な水準で満たそうと思ったら「女性医師が働きやすい環境」とは程遠くなるのではないか、と。この名文を読み、共感するだけならば、日本の女性医師率は低いままでしょう。

 東京医科大学が続けていた慣習に対し、時代錯誤も甚だしいと呆れた人は多いでしょう。トンでもない常識が罷り通る世界だな、恐ろしいな、と。しかし患者サイドとはいい加減なものです。最愛の人が重病(あるは急病)の時は、少しでも早く、十分な経験を積んだ医師に診て欲しいと願う一方で、今以上の医療費負担はとても受け容れられないと思っている。結果、一人の医師にかかる負担が増え、医療現場の実務は過酷なものになる。患者を救いたいという医師達の責任感に甘えて、ブラックな職場環境を押し付けているとも言えるのです。この難問にどうアプローチするのか。

 私なりに思うところはありますが、書き始めると長大になりそうです。

 いずれにせよ、医学部受験生は、大いに覚悟を持って受験勉強に向かって欲しい。世の中にはまだまだ解決できていない問題が山ほどあります。その解決に一人一人が挑むことで、社会は前に進む。

 受験で要求される程度の負荷に、負けちゃいけません。

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