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医学部受験の慶応進学会フロンティア» ブログ » 中村 克己» 自己肯定感

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自己肯定感

   投稿日: 2018/04/08    投稿者:中村 克己

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 日本を含めた7か国の若者(13~29歳)の意識を調査した2014年版の「子供、若者白書」によると、「自分自身に満足している」と答えた人は欧米では80%前後に対し、日本人は約64%だったそうです。「自分には長所がある」と考える米国人は93%でしたが、日本は70%弱。総じて日本の若者は、自己肯定感や自信が低いと言われます。

 様々な要因が考えられますが、彼我の教育方針の違いが挙げられるケースはよくあります。アメリカには褒めて育てる文化があるから子供の自己肯定感が高められる。翻って日本の場合...といった議論。

 劣等感は、人と比べることから生まれる、と私は思います。ごく単純な自分の経験値で言うと、小学校時代は誰かと自分を比較したことはありませんでした。毎日、目一杯遊ぶ以外のことは何も考えていなくて、バリバリの幸福感を感じていたように思います。中高時代も「人は人、自分は自分」という感覚で我が道を行っていましたが、大学に入ると、さすがに職について考える。やってみたい仕事はいずれも人気商売で倍率が高い。途端にライバルが強力に見え、自分が心許なく思えたものです。

 言うまでもなく、医師は多くの若者が憧れる仕事であり、特に今の時代は狭き門です。医学部受験生の中には、そんなに縮こまらずに、もっと自分を肯定してノビノビやった方がいいよ、と思う生徒さんがいますが、それは今の私から見た視点。振り返れば、私自身も自信が持てず、理想と現実のギャップにため息をつきたくなる日々がありました。

 理想を下げれば自分を肯定しやすいのかもしれませんが、若者が最初からそのゾーンを狙うのは賛成しません。自分の身丈に合わせた、恰好な理想を捕らえるのは、今いる場所で力を絞ってからです。

 目標に近づくために医学部受験生がやれることは、結局のところ、「当たり前のことを当たり前にやる」ということ以外になく、日々の展開は地味そのもの。このあたりも「理想と現実のギャップ」を感じやすい要因です。ただ、勉強が行き詰って来ると奇抜な意見に耳を貸したくなりますが、現実世界で極論がまかり通ることはまれ。真っ当なことを真っ当に続けることの大切さと難しさ。それは、講師として何度強調しても足りない、大事なポイントです。

 前回のブログではかつての教え子と食事をした話を取り上げましたが、そのうちの一人と初めて会ったのは9年前のことです。彼は高校を卒業したばかりで、私も医学部指導のキャリアはまだ浅く、お互いに必死でした。

 彼は「一次合格止まり」が何年も続いて苦汁を嘗め、これが最後と決めて臨んだ年に、補欠合格が回って来たのは3月30日でした。その時には既に、他学部に進学すると心を決めていて、清々しい気持ちだったそうです。やれることは全てやった。悔いはない。新たな道で頑張ろう、と。その中で合格通知が来て、周囲はもちろん欣喜雀躍大爆発。でも、彼はひとり狐につままれたような、静かな気持ちだったそうな。日々の努力を積み重ねて来たからこそ、結果に関わらず自分を肯定できる心境だったのではないでしょうか。自分がやれることを全部やったら、そこから先は運命。彼は今、神様の差配で北里大学医学部に通っていますが、たとえ進学先が何処であろうと、おそらく充実した日々を送っていたと思います。

 抜群のキレと才覚であっさりと医学部に受かる受験生が仮にいるとして、でもそれを羨んでも意味がない。また、そのようなスーパー受験生が良い医師になれるかどうかは別問題で、その人なりの壁を乗り越えて初めて一人前になれるのではないか。

 最初から本物の人はいません。何者でもない人が、訓練を重ねて、何者かになっていく。だから毎日、目の前の勉強を、一生懸命、やるしない。そうして苦闘するうちにいつの間にか、お臍のあたりに溜まって来るのが本当の自信であって、プラス思考とやらを使ってアタマで無理やり自己肯定感を高めようとしても、そんなのハリボテだよね。医師国家試験が視野に入って来た彼と紹興酒を呑みながら、そんなことを想いました。

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